映画

『ミスト』(フランク・ダラボン)

(ネタバレを含みます)いままで見た映画のなかでも、とびきりの最悪の気分を家に持ち帰る。 そう、俺には帰る家がある。たかが映画のことじゃないか、ちょっと底意地の悪い監督の嫌がらせと思えば、忘れられる、明日からまた変わらない生活がある。そう思い…

『タクシデルミア ある剥製師の遺言』

かつて『がきデカ』で強烈な印象を残したエピソードに、「さすらいの剥製師」というのがあった*1。 凄腕の職人である剥製師が、師匠に苛められたか反発したかで、これを一家諸共殺害のうえ、全員を剥製にして逃亡。以降、追い詰められた彼は、通り魔的に辻々…

『スリザー』(ジェームズ・ガン)

バッドテイストの快作。ゾンビと物体Xとドリームキャッチャーを掛け合わせたような、粘液と触手と内蔵でおなかいっぱいな映画なのだけれど、らんちき騒ぎとも言えるこの惨劇の舞台が、アメリカ西部の片田舎であるというのが、説得力を持っていて素晴らしいと…

『消えた天使 -The Flock-』(アンドリュー・ラウ)

【ネタバレあります】性犯罪の前科のある登録者を監視する監査官のリチャード・ギアが仕事熱心で、受けもちの登録者のところへ日参し、少しでも変態行為を見せようものなら容赦なく金属のパイプでめった打ちにする、という、たいへんバーバリアンなお話。 “…

『御巣鷹山』(渡辺文樹)

DVD、シネコン、HDR、ネットetc。ここ数年来、映画を取り巻く環境は全て、映画が個人によって所有され、好きなように消費される『コンテンツ』になることを要求した。この環境で受け入れられる映画とはつまり、それを消費されるモノであると意識した作り手に…

『デジャヴ』(トニー・スコット)

シャマラン以降の一連の底抜けアメリカ映画が好きだというのは何度か書いてきた。不可思議な謎やサスペンスで客を引っ張っておいて、ネタは宇宙人でした!とか幽霊でした!と徹底的に脱力させてくれるそんな愛らしいアメリカ映画たち。 でも配給会社は困るの…

『ナイト ミュージアム』(ショーン・レヴィ)

ゾロゾロと人でないものが蠢き出す映画はワクワクする。だから子供をダシに『ナイト ミュージアム(吹き替え版)』を見る。字幕版は戸田奈津子先生。ああ、『パフューム』『ラストキング・オブ・スコットランド』に続いて戸田先生字幕を楽しむ機会を失してし…

影響を受けた映画はカサヴェテス

最近、フリーマッケットに加瀬亮君の本が出ていて、友人たちと眺めてたら「影響を受けた映画はカサヴェテス」と書かれてました。チェッと舌打ちして、みんなで「加瀬亮君がどんな映画を挙げてたらカッコ悪いか」を一生懸命考えていたのですが、結構難しいの…

『叫(さけび)』(黒沢清)

ブーンという空調かなにかの唸り。どこからか響いてくるコツコツいう音。古くなった蛍光灯が明滅するするときに発するノイズ。『叫(さけび)』で通奏低音の如く間断なく画面を覆うこうしたノイズは、不安をかき立てるSEとして、Jホラー以降おなじみの手法で…

『どろろ』(塩田明彦)

もはやこれは日本映画ではない。といってそれは旧来から日本映画とハリウッド映画の間に横たわるといわれる壁−桁違いの美術予算によるスケール感とか、CGのクオリティとかが見劣りしない、という意味ではない(見劣る 笑)。キャラクターがとにかく単純だ。…

『犬神家の一族』(市川崑)

過日、どなたかのブログを読んでいたら、新版『犬神家の一族』について言及されているその中で、「松子が戸棚に祀ってあるカワウソかなにかの絵に手を合わせ云々」とあって(うろおぼえですが)、ああ、カワウソかあ・・・と思った。あれは『狗神』なんです…

『鉄コン筋クリート』(マイケル・アリアス)

『パプリカ』との声優の比較で言うなら、二宮和也・蒼井優の起用からすでに、こちらはあいまいな輪郭の世界観を構築するのが制作上の意図だったのだろう。レトロ=ポストモダンのガジェットめいた街並をCGで精密に作りこんで、その上で自意識の揺らいだキャ…

『パプリカ』(今敏)

輪郭のはっきりした作画と、ベテランの声優による迷い無い演技という選択に如実なように、夢と現実が混在する世界観を描きながらも、作家の自意識が観客の自意識を作品鑑賞に巻き込むような“メタ化”の排除が徹底されている。 おかげで観客は映像の遊びを安心…

『硫黄島からの手紙』(クリント・イーストウッド)

先に断っておくと、ウチは家内と、その影響で息子が嵐の大ファンなのである。どのくらいのファンかというと、一週間にオンエアされる、出演する歌番組、ドラマ、バラエティ、NEWSゼロ、コンサートや会見があったときには翌朝のワードショーをくまなくハード…

『父親たちの星条旗』(クリント・イーストウッド)

男は、黙って、ズドンだ!イーストウッド映画を見る楽しみを一言でいうなら、そんなズドンを息を呑んで見つめることだ。ズドンというのを無理に説明すると『主人公の善悪に係らず、その信念が暴力的に決行されるさま』とでも言えようか。女が半身不随になっ…

『時をかける少女』を伝説たらしめる3つの背景

よかったよかった。細田守&奥寺佐渡子という贔屓のひきたおしの二人の共作が、よもや傑作にならないとは思っても見なかったものの、まさかここまでの好評の嵐。 初日にテアトル新宿を訪ねた思い出が、伝説の始まりに立ち会ってしまったようで、もはや誇りに…

日本の映画会社の成分を解析する

【成分解析 on WEB】 http://seibun.nosv.org/ 東宝の解析結果 東宝の47%は夢で出来ています 東宝の43%は利益で出来ています 東宝の5%はマイナスイオンで出来ています 東宝の3%はミスリルで出来ています 東宝の2%は心の壁で出来ています 東映の解析結果 東映…

芸能人格付けチェック!お正月特大スペシャル

所詮芸能人などひと皮向けば田舎者、小金持って高級レストラン通ったところで本物の味なんかわかるわけねえよな〜と、下種な一般視聴者の劣等感をスカッ!と解消する名番組『芸能人格付けチェック!』を見た。もちろん下種な私も、「伊勢海老とザリガニの区…

『撮影現場のリスク管理も含め、僕らはMacに移行する(阪本善尚)』

きのう幕を閉じたInterBEE 国際放送機器展。 幕張メッセで大々的に行われていた、国内有力メーカーから、国際的なトップメーカまで、映像産業を支える最先端技術が集う大展示会のその一角、ひときわスタイリッシュな装飾と巨大なモニターが目につくAppleComp…

根岸監督、柳町監督の受賞

「雪に願うこと」東京国際映画祭初の3冠 http://movies.yahoo.co.jp/m2?ty=nd&id=20051031-00000054-nks-ent「カミュなんて知らない」ある視点部門 作品賞 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051031-00000010-sph-ent 東京国際映画祭にはコンペ枠のほかに…

『がんばれ!ベアーズ/ニューシーズン』

■オリジナルに忠実なリメイクであると聞いていたので、冒頭は当然、スプリンクラーの水滴眩いグリーンのグラウンドを、悠然と整備するトラクターの姿から始まるものと思っていた。それはたぶん私の記憶違いで、トラクターからはじまりトラクターで終わるのは…

子どもは見るなというメッセージ

今世紀初頭、アメリカは唐突にその歴史上初めての“空襲”を受け、自分達もまた文明の塔に踏みつぶされる存在であるというビジョンを突きつけられた。 その期を逃すまいとスピルバーグが思ったかは知らぬが、『宇宙戦争』はあからさまな911映像の模倣に始まり*…

『三丁目の夕日』と光の塔

(http://d.hatena.ne.jp/beach_harapeko/20050708/p2から続く)ここで少し脱線して、こんな動画を見てみたい【『ALWAYS 三丁目の夕日』特報2】 http://www.always3.jp/冒頭、路面電車から見た目とおぼしき、レトロなビルを見上げる移動ショットに立ち現れ…

時代を反映する『宇宙人の脅威』

一度見たら忘れられない、独創的でありながらどこかユーモラスなフォルムで、『タコ型宇宙人』と共に20世紀SFを代表するキャラクターとなった『3本足の巨塔=トライポッド』は、こうして20世紀における科学技術の暴力性を予見する存在として生れ落ちた。だが…

『宇宙戦争』と万博

H・G・ウェルズにより1898年に発表された『The War of the Worlds』の背景について、東京創元社刊『宇宙戦争』ASIN:448860708X、中村融は以下のように述べている。 冒頭から明らかなように、火星人に侵略される英国は、ヨーロッパ列強に侵略される植民地にな…

『宇宙戦争』の補助線としての『フォーガットン』

【以下『フォーガットン』のネタバレ含みます】事件を追う母と男の前に、次第に真相が浮かび上がってくる。何か『人間でないもの』の関与が台詞で仄めかされるが、他にも冒頭からの執拗な【真上からの俯瞰ショット(低飛行空撮)】や、見上げる空に浮かぶ【…

『フォーガットン』

【問題】飛行機事故で子どもを亡くしたお母さんがいました。事故から一年がたったある日、部屋の中から子どもの写真や遺物が次々と消えていきます。夫や近所の人は『元々君に子どもはいない』と言い出し、精神科医からは『空想上の子どもを妄想している』と…

『タッチ』の予言が外れた件

えー、長澤まさみじゃないのー【参考】 http://d.hatena.ne.jp/beach_harapeko/20050620

『魁!!クロマティ高校THE☆MOVIE』これからの宣伝展開

講談社の週刊少年マガジンで連載中の漫画「魁(さきがけ)!!クロマティ高校」の実写版映画について、元巨人軍選手のウォーレン・クロマティ氏(51)が29日、「無断で名前を使用された」として、映画制作・配給会社「メディア・スーツ」(東京都渋谷区…

夏のリビドー

『あのタッチがついに映画化』 http://touch.yahoo.co.jp/ 東宝がセカチュー以来となるYahoo!での公式サイトを立ち上げた。Yahoo!の映画特集はベースが広告出稿なので、サイトデザインの大幅な変更やコンテンツの更新などは基本的にはない(ニュースなどは併…