夏のリビドー

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『あのタッチがついに映画化』
http://touch.yahoo.co.jp/
東宝がセカチュー以来となるYahoo!での公式サイトを立ち上げた。Yahoo!の映画特集はベースが広告出稿なので、サイトデザインの大幅な変更やコンテンツの更新などは基本的にはない(ニュースなどは併設の公式ブログでフォローされる)。にもかかわらず3ヶ月という比較的長期になるYahoo!での展開は、裏返せばこの時期に既に、作品の『売り方』がはっきり決まっているという現れだろう。
それがもっともよくわかるのが同サイトで見られる【予告編】で、冒頭から【入道雲】【野球道具】に続いて、眩いばかりの長澤まさみ長澤まさみ長澤まさみ、だ。【夏→高校野球→可愛いマネジャー】という青春の黄金率、というか妄想、スポーツ少年の永遠のリビドー。この予告編、このサイト、この映画の宣伝で前面に押し出されているのは、ただひたすらその一点のみ、双子が死ぬ【涙】も弟ががんばる【感動】もなーんもなしという潔さ。
これは決して貶しているのではないよ。この割り切りこそが今の東宝の強みだと感服しているのである。
例えば今回、長澤まさみは春先から『カルピス・ウォーター』の宣伝に登場し、タッチキャンペーンを行っているという周到さ*1。クランク・イン前からだよ!?ここでも彼女は、乾いたスポーツ少年や外回りで汗を流すサラリーマンに向かって(自販機のポスターやコンビニの棚などから)、南ちゃんばりの声援を送りながら甘い初恋の味を勧めてくるのだ。
そして間もなく、夏の高校野球が始まる。全国の野球ファンが釘付けになるこのイベントの時に、街に氾濫するポスターがある。『ビクター・甲子園ポスターキャンペーン』*2。毎年毎年、ひとりのアイドルが女子マネージャーに扮し、全国都道府県代表校の校名とともに、ズラーッと駅貼りされるアレである。額の汗を拭う事なく、祈るような眼差しをグラウンドに向ける少女たちといったお決まりのポースによって、高校野球という男子の聖域が実は、マネージャーやチアリーダーという女子からの無償の声援=愛情=庇護を受けているという甘い幻想に支えられており、ひいてはそれこそが日本男子をこれほどまでに惹き付けるのだというメカニズム(戦時中の兵隊さんと女子挺身隊の萌え構造と同じだな)を端的にあらわしているあのポスター群。
予言しよう。今年、あのポスターには長澤まさみが選ばれることだろう(何せ、第一回のキャラクターは南ちゃんなんだもの)。そうして彼女の健康的で健気な微笑みにより、全男子国民の心に【夏→高校野球→可愛いマネジャー→南ちゃん=長澤まさみ】の構図は刻み込まれ、初恋の甘い味に誘われて映画館に足を運んでしまうのである。日本人の行動原理の最もベタで揺るがし難い部分を大胆についてくる宣伝展開だ。恐るべし東宝。
まあ敵は『男たちの大和/YAMATO』*3くらいだろうか。

*1:http://www.calpis.co.jp/cw/

*2:http://www.jvc-victor.co.jp/koshien/poster.html

*3:http://www.yamato-movie.jp/