時代を反映する『宇宙人の脅威』

一度見たら忘れられない、独創的でありながらどこかユーモラスなフォルムで、『タコ型宇宙人』と共に20世紀SFを代表するキャラクターとなった『3本足の巨塔=トライポッド』は、こうして20世紀における科学技術の暴力性を予見する存在として生れ落ちた。

だが半世紀を経た1953年版の映画『宇宙戦争ASIN:B000666QAG、トライポッドは登場しない。これについて殊能将之

1953年版でトライポッドが円盤に変わっているのは、特撮の限界からでしょうね(三本脚で歩かせるより、ピアノ線で吊るほうが簡単だから)。
http://www001.upp.so-net.ne.jp/mercysnow/LinkDiary/links0507.html

と指摘していて、案外身も蓋もなくそんなところが真相な気もするが、そもそも『搭乗歩行型の兵器が既に脅威ではない』時代背景があったのではと、ここでは強引に進めてみる。

第二次世界大戦が連合国の圧勝に終わったのは、特に米国と『他人種』である日本の関係においては、本土空襲を可能にした圧倒的な航空兵器の物量の差であり、いうまでもなく核兵器の存在であった。その後、朝鮮戦争を経て米国の経済的・科学的・軍事的優位が明らかになる一方、台頭する東側諸国との緊張関係が強まる中で、米国人が漠然と感じていた脅威とは、東側諸国の−ソ連の新型航空兵器が急襲してくるというシチュエーションだったのだろう。つまり53年版の映画において製作者は、米国人の『敵が空から急襲してくるのでは』という不安感を、“飛来するエイのような戦闘機”に搭乗する『宇宙人の脅威』に置き換えて見せたのだった。

ではなぜ、2005年版の『宇宙戦争』において、再び『3本足の巨塔』は召還されたのか。

http://d.hatena.ne.jp/beach_harapeko/20050711/p1へつづく)