『消えた天使 -The Flock-』(アンドリュー・ラウ)

【ネタバレあります】

性犯罪の前科のある登録者を監視する監査官のリチャード・ギアが仕事熱心で、受けもちの登録者のところへ日参し、少しでも変態行為を見せようものなら容赦なく金属のパイプでめった打ちにする、という、たいへんバーバリアンなお話。

“変態はぶちのめして当然”と公言するギアおじさんはもちろん組織の鼻つまみもので、若いお姉ちゃんがお目付役で相棒に任命されるが、反目するばかり。
そのうちギアおじさんが“俺も変態なのかなア”と弱みを見せるとお姉ちゃんはコロリ。かくして2人は変態少女誘拐魔を追うのだったが・・・

こう書いてみるとあれですね、まるでイーストウッドの映画みたいだけど、随分と印象は違う。
イーストウッドが自分の信じた価値観に猪突猛進、とにかく強い行動力で映画をぐいぐい引っ張っていくのに対し、この映画でのリチャード・ギアは自分を含むすべての人間に猜疑心を抱き、神経症的な調査と行動を積み重ねて、ひたすら周囲をイライラさせていく。

ただ映画の核にある価値観が“変態は更正したように見えて実はずっと変態”といういささか大雑把なものなので(更正した性犯罪者はひとりもでてこない)、受け持ちの登録者をすべて嘘つき呼ばわりしてたギアおじさんは結局正しい人だった、というオチになっている。ギアおじさん、安全圏。

ラスボスのドS女演じるビオラ・フライ最高。イーストウッドなら、きっと一戦交えちゃったりして、それでも最後にはあっさり額を打ち抜いたりするんだろうが。彼女に勃たないギアおじさんに、変態にあこがれる資格はないと思った。

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