『霊感のない刑事(全長版)』篠崎誠監督

4月23日(土)@アテネフランセ

対象を描写し尽くそうという意志は実験体を腑分けする科学的好奇や、愛玩する命を剥製や蝋人形化することで時とともに閉じ込めてしまおうという貪欲な所有愛に似てきて、それはどちらにせよ対象を殺し、死を刻み込むという傲慢で残虐な行為であることが本質だ。
主人公の刑事は、醒めても醒めても醒めきれぬ悪夢の入れ子に閉じ込められるという、残酷な罰を背負わなくてはならない。霊が見えない=愛すべき最も近しい他者の視線を受け入れられぬという罪を、絶対に姿を現さない霊の不気味な干渉を受け続けることで償わせようというその執拗な描写が、合わせ鏡に映った像のような、永遠に、どこまでも暗く遠く落ち込んで行く彼岸を感じさせたとき、ストーリー上では、ある役割をもった人物が、突如亡霊と化すかのような変異を遂げる。
(全長版)ではその人物の彷徨が、ストーリーや脈絡と一切の関係を絶ったなかで、ひたすら不気味に、無意味に延々と繰り広げられる。視界を奪われ、人格を剥ぎ取られ、目的地もないままの地獄行。これもまた罪という事物の描写なのだろうか。

【電脳刑事まつり版『霊感のない刑事』】
http://www.netmovie-fes.jp/jpn/special/detail_p3_001.html