銀座の歩行者天国は2丁目から三越前の交差点あたりまでが人手のピークで、松坂屋を過ぎると人通りが少なくなる。それにしても、松屋・三越に比して、松坂屋の侘しさは、単にその立地だけによるものなのか。建物の古さ、館内レイアウトの乱雑さ、客の少なさそのいずれもが訪ねるたびに気分を滅入らせてくれるのだが、なかでも広いばかりで寒々しいその屋上は、逆に子供を好き勝手に走り回らせることができるという理由で、じつはなかなか気に入っている場所でもある。
さて今日も、その屋上へ向かおうとエレベーターを待っていたところ(ついでに言うと、2機しかないこのエレベーターの遅さも特記ものである)、7階催事会場で『銀座の街並模型展』なる催しが行われているという。なかなか興味深いと、いそいそとエレベーターに乗り込んで会場に向かった。
さて7階は、メイン催事である『ハウルの動く城』展で結構な人出。入り口から、大きな城の足の作り物が足踏みをしているのが見え、息子が中に入りたいと言い出した。映画も見ていないのに、と思いながらも、入場料を払い、『まさか、この足が一番の見物じゃなよね!?』と受付嬢に軽口をたたきながら入ってみると・・・
足以外見る物なしorz
さてハピネットだかムービックだか謹製のお人形に見送られて退場すると、そこはデパート催事お約束の物販コーナー。こちらも映画を見ていない我々親子には関心がなく、そそくさと通り抜けると、おお、そこに『銀座の街並模型展』の看板が!
そこには三畳ほどのテーブルの上に、30センチほどの透明なアクリル板で囲まれたスペースいっぱいにミニチュアの銀座の街並がひろがっていた。段ボール製の建物一軒一軒に、屋上・側面それぞれに写真が貼られている。屋根が斜めになっていたり、屋上に突起や看板があるものもちゃんと立体的に再現されていて、なかなかに手が込んだジオラマだ。退屈そうな息子をあしらいつつ、しばらく眺めたのち、さてと顔を上げて見回すと、なんとこれで『模型展』は終わりである。
たしかに『展示』にはちがいないだろうが、しかしこのエレベーター脇のスペースに唐突に置かれたジオラマを『模型展』とよぶその違和感を、ハウル展を見終わって帰るお客さんも感じるらしく、みな一様にジオラマに視線をやり、一応の感嘆の声をあげつつも、消化不良な表情を浮かべながら通り過ぎて行くのである。
屋上は、いつもより一層寒々しく、早々に引き上げた。