蛇にピアス(金原ひとみ)ISBN:4087746836

外見と内面との齟齬、ということを考えた。パンクなくせに癒し系(笑)だし。
ギャルでもパンクでもなんとなく社会にそれまでなかった外見をした集団を定義して判ったことにするのは社会的に安心だからで、それが安易につかわれる特に新聞やTVで紋切り型に使われることは時に主にネットやうるさ型の雑誌で叩かれ嘲笑されるのだけれど、ではひとつひとつの内面がどれほどの自覚をもってその紋切り型の外見を選び取っているかを語ろうとする言葉は、下手をするとその個性的な物語までもが、実はアタシはこう見えていい子だし、みたいな紋切り型に嵌ってしまう、それは自分を語る言葉そのものが、各々の中に紋切り型なものしか用意されていない、みんな語りたがりなのに言ってることは同じで、でもやっぱり自己規定を自分の言葉でしたいけどなんにせよ『めんどー』だから、なんか今日も苛ついて最悪、というような齟齬。
ここにはない本当の自分探し、などという愚は犯さず、現実肯定という逞しさを選び取ったことで、皮膚を隔てた内と外との折り合いを自分の内部に向かって文字通り掘り進まざるを得なくなった登場人物たちの生き方の傍らに、『純情』という言葉を置きたくなる(現実逃避の馬鹿ロマンチストの俺!マイナス100点)。