オーデュボンの祈り(伊坂幸太郎)ISBN:4106027674

昨日も出てきた友人から、伊坂幸太郎ジョン・アーヴィングのファンで、そういえば『オーデュボンの祈り』と『オウエンのために祈りをISBN:4105191039』がタイトルが似ている、と示唆を得た。

で読了したのだが、なるほど。アーヴィングだ。タイトルだけでなく。

両者に共通しているのは、登場人物が知らずに自分が全体の出来事の、まるでパズルのピースのように、小さくても欠くことの出来ない一片としてあらかじめ組み込まれていたことを強く意識する点である。

共に(ある種)ハンディキャッパーによって予言される未来は、アーヴィングでは宗教観と分ち難く結びついて『運命』と名付けられるけど、この小説では未来を見通すカカシの用意した事件のシナリオとして提示される。

シナリオがすべてあらわになったとき主人公は『僕はそんなことを信じようとしているのか』と呟く。そしてこのシナリオを用意したカカシ=最後まで犯人を指摘しない名探偵の意図に釈然としない想いを抱きながらも『これが現実でないなら、それはそれでいいじゃないか』と小説自体のなりたちに揺さぶりをかけるようなことを口にしながらも(笑)すべての出来事を許容する。

つまりこの小説は、『カカシ=名探偵=神の視線』という探偵小説メタノベル論を用いて、宗教的な『運命』という言葉で見えなくなっているアーヴィングの小説のメタ構造を暴いてみせた、一種ジョン・アーヴィング論として読めるのだ。

・・・僕はそんなことを信じようとしているのか(爆)

ところでこの『探偵小説メタノベル論』、何度か見たことあるんだけど、オリジナルって誰が唱えたんだろう。はてなで質問してみようかな。