『米国“闇”へ』(NHK 3日)

イラク戦争後、アメリカの捕虜収容所で行われた虐待の実態と、その背景を追うドキュメンタリー。
当時、ネットに流出した、捕虜に暴行を加える米兵たちの、にこやかなスナップ写真(背景には裸にされた捕虜が、ピラミッド状に「積み重ねられ」ている)が記憶に新しい。

その、悪びれない軍人たちの笑顔は、先日、フレデリック・ワイズマン映画祭で見た、精神異常犯罪者の矯正施設を描いた『チチカット・フォーリーズ』に出てくる看守たちの、自分たちの日常になにひとつ疑問を抱かないまま、患者を非人間的に扱うその表情にそっくりで、50年前から人間が、人の目につかない場所でいかに振る舞うか、その本質が変わっていないことに改めて震撼する。

『チチカット〜』の時代は、出演者(被写体)に、映される=その向こうの多くの人間に見られる、という意識がなく、それが隠蔽された実態を暴くのだが、現在においては人は、キャメラの前で観客の目に応えて演技をしてしまう。

『米国“闇”へ』で、当時の暴行の模様を語る軍人たちのしおらしい態度と、流出したスナップに写る残忍な笑顔の対比はどうだろう。この、きわめて密室性の高い空間で、プライベートに映されたデジタル・カメラのデータが、ネットの波に乗って世界中に流布されることがなければ、20世紀の誇る文化である映像でさえ、その隠蔽された真相を白日の下に晒すことはできなかったのだ。

http://cgi4.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2008-03-03&ch=21&eid=21398

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