ユヤタンに挑戦♪

フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』(佐藤友哉
ISBN:4061821962

デビュー作だろこれは?
ということはすくなくとも普通に講談社ノベルスでこの話を読む読者は、この話以前にもしかして書かれたかどこかに発表されたか、あるいは作者のアタマの中にある話を知っているわけがなかろうから、『あの』兄であるとか『例の』姉であるとか『○○な』妹が、平気な顔をして唐突に現れるとあれっと違和感が生じ、しかもその存在の説明もないわりには、いやに存在感をまき散らしてはまた消え去ってゆくので、あとには消化不良な困惑が残る。
それは登場する人物の描写が、みななんらかのステレオタイプなキャラクターの断面であるからで、つまりアニメであるとか、ゲームであるとか、そういう外部に確立したものからイメージを吸い込むホースのような、中央から外部にのびる何本かの触手が、何人いるのかイマイチわからない『鏡きょうだい』の正体なのだろう。
キャラクター描写だけでなくて、作中、用いられる叙述トリックをはじめとするいくつかの推理小説の手法も、物語を構成しようという意図より、本書をミステリたらしめるアリバイとして強引に召還された感が強く、結果キャラクターもトリックも物語も、同一の、借り物のカードをペターっと並べた感じ。
リアルなのは『弱い』主人公の、幼稚な正義感や暴力衝動やぜんぶひっくるめた自己嫌悪と自己憐憫をないまぜにしたような、不安定な感情だったりする。
けれどもこの弱さは一筋縄ではいかなくて、おどおどしながらも、大胆かつ強引に外部を取り込んで並べて散らかすさまが、なんだかとっても愛しくなってしまうのはなんでだろう?
だけど、最後に持ってきた結論がそれかい!とほほほほ!