松山ん中の獅見朋成雄

※この日記は松山のネットカフェで書いています

本日、松山出張。飛行機の中で『山ん中の獅見朋成雄』(舞城王太郎ISBN:4062121131

書道・料亭・相撲・茶道。和風アイテムの羅列は王太郎癒し系小説か?そんなわけないと思うが、さりとてすべてを『解釈なんてしなくていいんじゃ』と投げ打って逃走疾走のラストを、爽快感とか圧倒的とか言う言葉でしか語れないのはそろそろまずいんじゃないかしらん。

さて仕事は速攻終わったので、歩いていける宿までの距離を、あえて路面電車に乗ってみるのは男の子の血のなせる業。
ついでに乗り物好きの血は、宿の裏手にある、城山ロープウェイに興味津々。

『もう最終便ですよ、帰りの便はないので、徒歩で降りることになりますよ』

という窓口のおねえさんの忠告を軽やかに受け流し、いそいそと山頂まで登ったのはよかったが、いざついてみると人っ子一人いない城というものがいかに不気味かいきなり知ることになりました。あ、おねえさん、帰りのロープウェイで帰っちゃうし!ほんとに周り誰もいないし!山のうえ、俺と城だけだし!

さてそれでもまだ空は明るいし、城の周りを見てやるべと、城壁をぐるり囲む道を進んでみたら、そこは明かりひとつないけもの道。左手に、薄暮に黒々と聳える城壁は、戦国時代から血や死を吸い取ってきた容赦ない残酷さを無言で放射するかのような存在感で、いやもう、怖い怖い。
それでも城の中に入り、庭園から夕日に映える瀬戸内海の絶景を眺めたまではよかったが、さて帰ろうかのと下山道に足を踏み入れたら、明かりも舗装もない段段が、もう空の明かりの届かない森の奥へと続いていて、なんだよ、県庁所在地の真中で、なんだってこんな闇の中に降りていかないといけないの!?

ようよう足元だけがかろうじて見える山道を下りながら、どんどん薄くなっていく薄暮と地面のあいだに、得体の知れない、手で触れられるかのような霧のような闇が充満してきて、やばいよやばいよ、仕事帰りにスーツ姿で、こんな街のど真中で遭難している場合じゃないよ!と、本気であせりながら10数分降りてゆくと、急に視界が開け、空に残った明るさをかき集めたようにぼうっと光る谷間に、広大な、低い塀に囲まれた奇妙な屋敷を見たときは、思いましたね。

「さっき読んだ『獅子見朋成雄』の世界に入ってしまった!」

さて、その建物は「史跡公園」とかいう施設でした。出口が工事中だったので、警備員の目を盗んで、工事の足場をたどって脱出するというアドベンチャーふうオマケつき。

そのあと、カミさんのお兄さん夫婦と、おいしいお魚をいただきました。なんだかとっても記憶に残りそう、viva松山。