『二度はゆけぬ町の地図』(西村賢太)

二度はゆけぬ町の地図

二度はゆけぬ町の地図

10日前後に読了。西村賢太芥川賞候補もなった藤澤清造もののような、他者との関係性に緊張感を孕ませる名人(作風的にもキャラクター的にも)と思っているので、独りで悶々としてたり、家主のばあさんから逃げ回る話より、留置所に拘留され、看守や刑事、同房の囚人らと奇妙に親睦が深まっていく「春は青いバスに乗って」が好きだ。釈放後、護送車の窓から見た桜を思い出しながら、檻の中で出会った彼らに、ふたたび出会えなかったことを悔やむところがとくに良い。