尖 東京展「京都の呼吸力」(佐藤美術館)

京都の若手“日本画家”*1により結成されたグループの、はじめての東京での大規模な展示会。のびやかで個性的な作品に触れていると、自然と“かあぃらしい(京都弁ふうなつもり)”という思いが溢れてくる。

現代美術から美術に触れるようになった、素人の鑑賞者だから尚更、生の絵を直接目にすると過剰に興奮して、絵画というものが異様な存在感を纏った『モノ』であるという当たり前のことに、そのたび気づかされる不甲斐なさなのだが、特に日本画の『モノ』としての表面である顔料の粒子感は、ほんとうに頬擦りしたくなるような肌理を持っていると思う。風通しのよい日本家屋の、今の壁の漆喰や珪藻土みたいな冷ややかさと温かみみたいな。

尖のひとたちの絵は(ひとくくりにするのも乱暴なはなしだが)そんな優しい肌触りに加え、絵が大好きな人達が持つ、稚気とおおらかさとを纏っている。優雅な時の流れのなかで、身近な生活をいとおしむ、そんな京都のひとたちのお宅におじゃましたような気持ちになって、会場にいらっしゃった作家さんに“ああ、かあぃらしいですねぇ”とついつぶやいてしまった。

昨今、松井冬子や町田久美や山口晃のブームにみられるようにに、現代美術と日本画の蜜月が続いているようにみえる(強引に会田誠も?)。でもそれは、東京と地方という、現代ではナンセンスと思える区分がしかし、厳然と生き続けているような日本の美術界の現状にあって、まだまだ“東京限定”の現象でしかないのかな、とも思う。

だからこそ、今でしか見ることのできない、この京都の“かあぃらしい”絵に触れることで、東京の現代美術ファンが、もう一つ先の“日本画”の楽しみ方を見つけられたらいいなあ。実はもっと彼らが東京でも人気者になって、毎年東京展が見られるといいなと思ってるのもあるからなんだけど。


平成19年9月11日(火)〜21日(金) 尖 東京展 「京都の呼吸力」
開館時間:10:00〜17:00(金曜のみ 〜19:00) *会期中無休 / 入場無料

決められたサイズや点数・展示方法では、表現しきれないものが沸々と湧いてくる。
「できるだけ広い、質の良い空間で誰にも遠慮をすることがなく自主的に作品を発表したい」
そんな思いで集った作家9名で「尖」は始まった。
「尖」と命名したのは「尖鋭的な意識を持って道を拓きたい」という気持ちと「このグループの結成がきっかけとなり最初は小さな流れでも、いずれは大きなうねりへと変化させたい」という希望をこめたからである。
当初より現在に至るまで一貫しているのは、「何よりも絵を描くことが好きで好きでしょうがない」そして「日本絵画に脈々と受け継がれてきた画材や技法について学び、自分たちの今の表現に繋げたい。」という二点だといえる。
謂わばグループが主催する伝統技法や画材の勉強会を吸気、作品発表を呼気として呼吸し「尖」は存在していると言える。
この度、佐藤美術館の御理解と御協力を得て、尖として初の東京展を開催する運びとなった。
そもそも尖では結成当初より京都と東京の二カ所での開催を目標としており、メンバーが足繁く上京して、いくつもの美術館やホールなどと交渉したが結局実現しなかった。そういう経緯もあり今回の東京展の実現は感慨深いものがあり、喜びもひとしおである。
さまざまな芸術・文化が交錯する刺激的な東京で現代の京都を呼吸する尖がどう映るのか楽しみにしつつ、この地での第一歩を踏み出したい。

ぜひご高覧ください。 尖一同

http://sen2007.petit.cc/

*1:メンバーにより、“日本画”に対するイメージや定義がちがっていたりするし、見る側だってよくわからないんだけれど、でも“日本画”に、それぞれのカタチでこだわっている、そんなイメージに、“”をつけてみる。