動かざること、ヤマンドゥの如く
チャーリー・パーカーが、生前に唯一その動いている姿を記録されたフィルムというのがある。
例の、めちゃくちゃ早いフレーズを、どんなふうに吹いているのか興味深く思いながら見たことがあるのだが、私たちが今、目にすることが出来る「動いている」彼は、驚いたことに演奏中ほとんど微動だにせず、LPジャケットでおなじみのあの微笑みを浮かべ、不動の姿勢のまま凄まじい勢いでサックスを吹き鳴らしているではないか。これでは、ジャケットを眺めながらLPを聴くのと何も変わりがない(笑)
超人的に巧い人は、運指に一切の無駄がないので、キーに乗せた指がほとんど(その複雑かつ高速な動きとは裏腹に)動いているように見えないというハナシなのだが、さて、今日幸運にもライブを見ることが出来た、ブラジルの「超人的に巧い」ギタリスト、ヤマンドゥ・コスタはどうだったかというと。
でっぷりした体躯にもじゃもじゃ頭。サンバを演奏するときはニコニコと笑いながらかき鳴らし、バラードでは、ネックを恋人のようにそっと抱く。流れ出す音楽は、豪放で大音量でなおかつ繊細でロマンティック。
ついつい目がいってしまうのは、手だ。高速でネックを上下左右する左手(ワープし、と言っても)、ビートをたたき出し続ける右手親指。
でも、もっともっと凄いなあと思うのは、その下で、ゆったり握りしめられた右のこぶし。こっちから見ると、ひっくり返したクリームパンにしか見えない、力みも少しの緊張も感じさせない弾き手なんだけど、よく聴いてると、2〜3台のギターが連奏してるみたいなフレーズが織り合わさっているのがわかる。
そう、あのクリームパンの裏側で、人差し指と中指と薬指と小指が、もう目に留まらない速さでと、正確無比な動きで、弦をつま弾いているのだ!カブトガニをひっくり返したみたいな。違うかな。
でも途中から、だんだんそういう凄い!って感じはなくなってきて、ああギターっていいな、この人の音楽は楽しいな、なによりこの人が大好きだな、って思えてきて、とても楽しかった。
「超人的に巧い」人って、そんな「巧い」ことさえも超えてしまうのだろう。チャーリー・パーカーの、その動かないステージでも、やんやの喝采を送る人たちの拍手の動きは、しっかり見えたのだもの。
【ヤマンドゥ・コスタ ビデオ】
http://www.yamandu.com.br/index.php?page=videos
【来日情報】
http://www.tupiniquimentertainment.com/yamandu/jpn/index_home.html
【インストアライブ まだあるよ】
日時:11/16(木)19:30 start
出演:ヤマンドゥ・コスタ(g)
スペシャル・ゲスト:鈴木大介(g)
会場:タワーレコード渋谷店5F特設ステージ
入場方法:観覧自由
お問い合わせ:タワーレコード渋谷店(03-3496-3661)