『オペレッタ狸御殿』(鈴木清順)

きのうがアレ*1で今日がコレとで気が狂いそうだ。書き割り然とした書き割り、横長に舞台を切り取った画面構成、めまぐるしい舞台転換と衣装替え、唐突に歌い舞踊る登場人物たちと、まったく共通点の多い両者だが、世間的にある程度、世界観が受容されているという安定感と、プロダクツとしてのまとまった感じ(群衆が半端に少ない、とか、紙吹雪がCGだったり、とか、製作過程の狂った感じがない)、しかしそこに安定しつつも、一体何がしたいのか意味不明の稚気をふりまく、監督・美術陣の老人力のちょっとした不気味さがなんとも今日的な『狸御殿』だった。
しかし、雨千代脱走のくだりでの、鼓の『ぽん!』に合わせ、ウクレレの上の鍵→空の檻と、モノからモノへカットがジャンプしていく呼吸や、もっと直接的には瀬戸物のタヌキや縫いぐるみのタヌキが、糸につられてふわふわ漂うさま、そして『極楽蛙』の♪けろけろ〜という脱力しきった鳴き声(人が吹き替えてる)など、まるっきり浦沢義雄の子どもむけ特撮シリーズのテイストそのものじゃないか。むしろ映画作品として浦沢世界を成立させる為に、鈴木清順木村威夫の力が必要だったと思わせるような内容で、かえって後半セット+照明のヴァリエーションで舞台を転換する清順ワールドが濃くなってくるにしたがい、なんとなく映画が失速していくような気もした。その為か、清順ファンには物足りなかったか、もちろんチャン・ツィイーやオダジョーのファン、ましてやデートめあてカップルの集客を大勢見込める内容でもなく、残念な客の入りとなってしまったようである。
この美しく(これ特筆すべきこと)稚気に溢れた傑作を、誰に届けるべきなのか、やっぱり『忍たま乱太郎』が圧倒的に受け入れられている幼稚園児や小学生低学年児童の情操教育のために、春休みにアニメ映画と併映でかかっていればよかったのではないか(理想的なのは『マジレンジャー』や『プリキュア』との二本立てだと思うけど、シネコンでは不可能な話だし、第一、会社が違う)。
30年前のテレビ番組と遠からぬ因果関係を感じさせるこの作品を、更なる30年後の日本映画のために、いまから子どもたちの心に強制的に刻み付けておこうじゃないか。

*1:http://d.hatena.ne.jp/beach_harapeko/20050602