邦楽叙事詩「スサノヲ」その2

http://d.hatena.ne.jp/beach_harapeko/20050516 より続く

<<第一幕終了>>

「あれれO君、これは意外と面白いな!」
「ですねえ、能の謡のバックに長唄とか、可笑しなものですね」
「ううむ、俺は謡も長唄も区別がつかないけど、耳に心地はよかったな」
「・・・まあ、全然違いますけどね・・・それぞれ技術がしっかりしてますからね、すくない稽古時間でも対応できるんじゃないですか。日舞と能の絡みにも違和感がないですね」
「スサノヲが能で、アマテラスが岩戸に隠れた後、宴会する神々が日舞なんだな。暗闇で恐れおののく神の踊りなんて、ほとんど暗黒舞踏みたいだったぞ」
「白塗りしてないだけで、山海塾かと思いましたね」
「またそこだけ音楽が武満徹の映画音楽みたいにオドロオドロしくて、妙にアングラな空気がただよってよかったな。しかしほんとうにオカルトだったのは、アメノウズメがすげえバ○○だったことで・・・」
「わー!わー!やめてください!そんな経験を積んだ女性を蔑視するような言葉を言わないでください!」
「だってアメノウズメといえば、神々の前で半裸で乱舞、とこう決まってるじゃないか。半裸が無理としても、せめて小池栄子くらいつれて来い!」
「無茶言わないでくださいよ。実際問題、アレだけの踊りが踊れるのは、流派でも家元クラスじゃないと勤まんないんじゃないですか。先輩お得意の脳内置換で、じっくり見ていると、ほら、だんだん娘に見えてくる・・・」
「見えない!断じて見えない!あと冒頭に出てくる神様な、白い紐みたいので全身蓑みたいに纏ってたけど、あれ、荷造り用のビニールテープだろ!」
「あのひと、狂言のすごい人なんですけどね*1・・・どうもこの舞台、あんまり予算が無いみたいですね。舞台の後ろに下がってる緞帳みたいのも、よくみるとやっぱり」
「あ、荷造りテープだ(笑)退場のとき、絡んじゃってたもんな」
「なんのための襲名だったのか・・・(涙)」
などと突っ込みをいれつつも、邦楽門外漢の私でさえ十分に楽しめる舞台ではある。もちろん謡曲をはじめ、長唄、清元、筝曲その他、台詞を聞き取るのもままならない一般人向けに、ちゃんと舞台両袖に台詞を表示するマシーンが備えられている。
そもそもお話は単純なので(昨年、息子の七五三のときに、神社からもらった『神話絵本・スサノオさま』とほとんど同じ筋である)、あーここで岩戸にこもるんだなー、次は踊りを踊って、タヂカラオがこじ開けるんだなー、と子どもでも楽しめるような内容である。
「でも先輩、後ろの席で退屈して喋ってるヨソの子どもを叱ってましたよね」
「うむ、そうは言っても、あの唄っていうのか、演奏にしても子どもには退屈だろうしな。字幕も文語調だし。でも後半は大丈夫だ。八岐大蛇退治の巻だからね、何せ演出が実相寺昭雄だから、怪獣映画はお手のものだろう!」
「そのために呼ばれたんですかね!あ、この人、芸大の教授だったんですね*2・・・」

(この項つづく)

*1:http://www.iijnet.or.jp/NOH-KYOGEN/kensyo/int/56/56i.html

*2:http://kodansha.cplaza.ne.jp/hot/people/2000_03_08/content.html