その名はオカン

目黒雅叙園で『華道家 假屋崎省吾の世界』展(13日)。
主眼は会場になった百段階段が、入場料千円で見られるというので行ったのだが、建築の荘厳・華麗・誇大妄想的情緒を喧しくも消し去っていたのは、假屋崎のけばけばしい生け花群ではなく、おしかけたオカン軍団のオーラであった。
入場口脇に設置された売店では、カーリーのビデオ、DVD、書籍、化粧品が並び、ついでにバッグ、ポーチ、ブラウスなど、商店街の洋品店に並んでいそうなグッズがどさくさ紛れに販売されている。
歴史の澱の積もった部屋部屋に、巨大で原色に溢れたオブジェとしか言いようのない生け花が並び、それを二重八重に、オブジェと同調したかのような集団的ケバケバオーラを発したオカンたちが取り囲み、口々に『マーイーワネー』と賞賛の声をあげる。
とはいえ、そんな『オカンオーラ』で照出された百段階段は、おそらく学芸員に率いられ、ありがたく拝観させていただくときよりも、本来のイカガワシさを露にしてくれたんじゃないか、そんな気もする。伝統や歴史というベールを強引に剥ぎ取り、対象の本性を吸い尽くさずにはすまない(それも無意識に!)オカンたちは、もはや歴史的な抑制から解放された快感に身を震わしながら、こう叫ぶのだ。
『イヤヨイヤヨも、好きのうちじゃろがー!』
壁の蒔絵や鏝絵の女達も、きっと数段、妖しい笑顔を振り撒いてくれているに違いない。
いや、苦笑いかな。
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