『針』(浅暮三文 早川SF SERIES J-COLLECTION ISBN:4152085428)

ある男が原因不明の皮膚感覚の亢進に見舞われていた。手が触れる道具、肌に当たる風、すべてのものがこれまでにない感覚を伝えてくる。

触覚により、モノのデザインに秘められた【モノの意図】と交信する前半は興味深いが、次第にそれが

輪ゴムは動物的に彼の舌をしめつけてくる。それは輪ゴムの本能のようで、さっきまでおとなしくいわれるままに従ってきたのと違い、狂おしいほどに舌をすぼませる。まるでその細いゴム糸が彼の舌を自分のものにしようとしているように、輪ゴムは生々しく、舌をとらえている。淑女が娼婦にいれかわったように。

と描写がエロに傾くにつれ、内容も分量も粘りを増していき、主人公(女性との接触がない男というのがミソ)の興味がしだいに下着から痴漢による接触、性行為そのものへ(さらにその先の刺激へ)とエスカレートするに従い、SFだったはずの本作はいつしかハードコア・ポルノと化してしまうので、通勤のお伴として本書を手に取ったわたしは、両隣に座る女性の視線に耐えかね(汗)かつあんまりそういう描写ばっかで飽きてしまったので、さっさと後半はスーパー速読。

あとがきによると、著者は【五感シリーズ】というのを構想していて、すでに【嗅覚・聴覚・視覚】は発表済みとのこと。
安楽椅子探偵』みたいなものを想像してみました。実際はこんな。
http://asagure.fc2web.com/index.html

異常味覚ってどうするんだろ。グルメ漫画だとありそうな設定だが。