ロンリー・ハーツ・キラー(星野智幸)ISBN:4120034860

冒頭、天皇を思わせる『オカミ』が死んだことで、多くの人々が沈黙し、多くのホームページが更新を滞らせるという描写があり、ああこれはあのイラク開戦のあとに世間を覆った気分を指しているんじゃなかろうかと思った。

メディアは政治的権力の無能や腐敗を糾弾しているけど、俺や俺のまわりの人間から言わせれば、為政者連中も自動的に動く得体の知れない装置によって弄ばれているにすぎなかった。政治家などいなくても、社会は自動的に回ってしまうのだ。

『得体の知れない装置』という相互的白痴的判断による世界運営に加担していれば、たぶん人は未来に対して責任を負わずにすむ。そんな自分だって、経済発展と言う過去の遺産に食わせてもらっている、言ってみれば現在にさえ責任を果たしていないのだから。
そんな現実をつきつけられて、無力感に苛まれた多くの人は未来や現在に対してなんらかの発言をする気力を失ってしまったのではないか。
そして未来に対する想像力を失えば、環境問題のような反経済的でストイックでかったるい問題から人々が目を背け、享楽的で白痴的な情報に人が群がるのも道理だろう。

ああ、風邪なんかひいて引き蘢ってると、厭世的になっていかんね。