最後の侍とモヒカン族の最後(その2)

http://harapeko.que.jp/archives/001507.html

「写真で見る幕末・明治」他数冊の写真集が手もとにある。明治という時代は幸運なことに写真の黎明期にあたり、また閉ざされた不思議の国日本への興味から多くの外国人が日本を訪れ、興味本位の(それゆえ貴重な)当時のなんてことのない街の風景や人々の習俗を写真に記録し、主に海外に残しているのだ。(中略)「ラストサムライ」の美術チームは、セットを造形するにあたって徹底的にこれら写真を研究したという。なまじ日本の美術チームに教えを乞うたり、日本の時代村のたぐいを利用しなかったことがこの場合大正解ではないかと考える。(中略)「ラストサムライ」は愚直に写真を再現することでそうした混沌として汚い町並みを作ることに成功し、いわゆる水戸黄門的町並みとは一線を画した。
 前述した「日本に無知なアメリカ人の描く勘違いの日本」という観点は、この点で明白な間違いである。勘違いしているのは日常的にテレビ時代劇を見ている我々であり、テレビに映る町並みをこそリアルと刷り込まれた観客である。写真を見比べれば一目瞭然、当時の雰囲気をまざまざと再現しているのは明らかに「ラストサムライ」で、その点だけでもこの映画は一見に値する。