クビシメロマンチスト―人間失格・零崎人識

西尾維新ISBN:4061822500

そもそも読書時には結構、語り手や登場人物に感情移入してしまうほうだから、西尾の「内省的な性格を自己批判(戯言)する」主人公の独白を読むことは、あとがきにある「読むことは自身を鏡に写す行為」というよりも、「読書(黙読)→感情(内省)」という行為の中に、もうひとつの『読書→感情』行為を含むことで、ワタシ自身がなんだか内部の語り手をアタマに飼ってしまったような(ホムンクルス!)、そのくらいの近い距離感で読んでしまったのだが、「クビジメロマンチスト」での「いーちゃん(語り手)」は、さらにその中で自身の鏡像のような殺人鬼と対峙し、こともあろうに外部から包囲した読み手の目の届かぬところで隠し事を働き、読み手の範囲を超えた言動をしだすに到って、トリックに引っ掛かかるという推理小説の驚きを超えた、一瞬世界が撹乱されたかのように目眩と動悸がしたのだった。
頭蓋骨に穴を穿つかのような小説(ちょっと言い過ぎ)。