[]クビキリサイクル[]―青色サヴァンと戯言遣い

西尾維新)ISBN4061822330

真面目にこの本につきあうなら、「戯言」という自意識過剰を装った、語り手の言葉を読み飛ばしてはいけないのだろう。

さて「自意識過剰」とは換言すれば「自分は他者とは違うという自己認識」なわけだが、それがあまりに小説漫画アニメゲームに頻出し、あるていどパターン化された「設定」化してくると、それに感化された読者の「過剰な自意識」にもはや大した個々の差異はなくなってしまって、「自分は他人とは違うと誰もが思っているという意味で、結局誰もが同じ」という状況になっていて、それは例えば『バカの壁』が何百万部も売れているということは「俺以外はみんなバカ」と、君を含めたすべての(少なくとも本を買った)人は思っているということと同じだと推察できるからで、とにかくこの世の中、多少財産があっても才能があっても成功していても、揺るがない自己を確立して大人になるということが困難な時代に、こともあろうに本を読んで自己研鑽ができるなどと『戯言』をのたまう輩に西尾維新は容赦がなくて、そういう凡人は「死んだ方がいい」のだと。

最近思うことは、この場であるとかWebLogなどを使って自分の「考え」を明示化すると、実にそれが他者の影響下にあるかということがよくわかって(Linkであるとか、TrackBackであるとかで、文字どおり一目瞭然だったりする)、特にある程度閉鎖的な空間にあっては、自分があきらかに全体の一部と化している、というのが「自覚的になって」きている。

そういう「自分自身のありかた」をなんとかしようとは最早思わないけど(自己研鑽しないという意味でなくて。あえて分りやすい言葉を選べば「もはやモテようとは思わないで」あたり)、創作の現場で、自己と自分が創作するその場に対して「過剰に自意識過剰」に立ち向かう人たちには好感がもてるな。

あと竹の漫画は素敵。西尾維新の講談社ノベルズは、装丁だけで全部揃えたいと思わせるよ。