食料品店のオババ

葉山マリーナの一角に、小さな児童公園があって、そのまた裏手にある神社の脇の路地を入ったところに、古びた『食料品店』がある。菓子とか日用雑貨とかそんなのを売ってそうな、いわゆる昔のよろずやが、まんま残っていて、以前から存在は知っていたが店に行く機会がなかった。
今日、近くを散歩中に、豚児が腹がへったと泣き出した。普段なら二、三発拳骨でも食らわせて黙らせるところだが、これは良いチャンスとその店で駄菓子でも買おうと行ってみた。
店は思った以上の『味』を醸し出している。なにより、店内に照明がない(笑)。まるで台湾とかバリあたりの露天のような匂いがする。
そしてカウンターに鎮座しているのが、またこの店にはこのキャラでなくては!と叫びたくなる見事なオババ。
丁度台の上に30円のビスケットの小袋があったので手にとると、
「それ、賞味期限が切れてるでしョ!」
「は?」
「でも、それくらい大丈夫だからいいわョ!」
「え?」
と、オババはそのビスケット(賞味期限2ヶ月過ぎ)をくれたのだった。

もとより、多少の賞味期限なぞ気にする私でもないので、有り難く好意をいただき、早速店頭で豚児に与える。むさぼり食った豚児は、進駐軍にチョコレ−トを貰った戦災孤児のような目をして「アリガトゴザマシタ」などと言うものだからオババ、
「あら可愛いわネ、これも持ってきなさい!」
と、奥から抱えるほどのビスケットを持ってきたのだった。

あ、今確認したら、こっちは賞味期限3ヶ月過ぎてる!