読書

『私の男』(桜庭一樹)

私の男作者: 桜庭一樹出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2007/10/30メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 429回この商品を含むブログ (458件) を見るどこまで、深い穴を覗かされるのか。絡まり合う蔦のように分かち難く結びついてしまった養父と養女が、世間…

『密室殺人ゲーム王手飛車取り』『世界の終わり、あるいは始まり』(歌野晶午)

密室殺人ゲーム王手飛車取り (講談社ノベルス)作者: 歌野晶午出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/01/12メディア: 新書購入: 1人 クリック: 29回この商品を含むブログ (149件) を見る『テレビばっかり見ていると、今に尻尾が生えてくる』かつて賢人がそう宣…

『奇偶』(山口雅也)

ミステリとは、不安のドライブである。なんの根拠もないが、そんなフレーズが思い浮かんだ。 始まりは『夜にそびえる不安の塔』で http://d.hatena.ne.jp/beach_harapeko/20070225/p1 それを読んだ直後は、少しばかりの居心地の悪さを感じただけだったが、直…

『集合住宅の時間』(大月敏雄)

id:lovelovedog さんの日記にこんな記述があって ダラダラと本の整理をしていたら、こんな本が見つかった。 『私の小説作法』(毎日新聞社学芸部編・雪華社・1975年)…司馬遼太郎が歴史小説はビルの屋上から人を見下ろして書くようなものだ、と書いていたり……

『夜にそびえる不安の塔』(井形慶子)

ああやばい。超常現象に対する距離感はとりにくい。オカルトやら超常現象やら、そういうものがこの世にあるのかと問われれば、それは、あるのだろうなあと答える私である。とはいえ、自分がそのような現象を直接操ったり、見えないものが見えたりすることは…

『植物診断室』(星野智幸)

母親が『子供を産む機械』である、という政治家の発言が、批判の的にされ世間を騒がせた。これはマスコミにおいて、女性に対するスタンスが『扱いに慎重を要する』事項と認識されているがため、裏を返せばそこにある、男性優位の思想があるからこその『弱者…

第136回芥川賞

http://www.bunshun.co.jp/award/akutagawa/ 芥川賞、23歳青山さん第136回芥川・直木賞(日本文学振興会主催)の選考委員会が16日、東京・築地の「新喜楽」で開かれ、芥川賞が青山七恵さん(23)の「ひとり日和(びより)」(「文芸」06年秋号、…

脳内か超常かメタ

『フライトプラン』が見たくて仕方がなかった。“衆人環視の飛行機の中から子供が忽然と消え失せる。客観的な事実は「子供は元からいなかった」と母親の妄想を示唆している。しかし、唯一残された娘の痕跡を心の支えに、母親はひとり、見えない敵に立ち向かう…

『アクアポリスQ』津原泰水

アクアポリスQ作者: 津原泰水出版社/メーカー: 朝日新聞社発売日: 2005/01/12メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (28件) を見る津原泰水を初めて読んだのは、去年の短編集『奇譚集』だった。 とにかく怖い小説だった。それはモチーフである…

『激走 福岡国際マラソン―42.195キロの謎』鳥飼否宇

激走 福岡国際マラソン―42.195キロの謎 (小学館ミステリー21)作者: 鳥飼否宇出版社/メーカー: 小学館発売日: 2005/11メディア: 単行本 クリック: 20回この商品を含むブログ (25件) を見る※『容疑者Xの献身』が直木賞を受賞した。これで『このミステリーがす…

『容疑者Xの献身』(東野圭吾)

容疑者Xの献身作者: 東野圭吾出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2005/08/25メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 148回この商品を含むブログ (996件) を見る【ネタばれを含みますのでご留意ください】今、この小説について書くときに、二階堂黎人氏の発言に…

『誰のための綾織』絶版問題つづき

山口貴士弁護士のブログで、今回の【盗作】を指弾したサイトに対し、検証がなされている。 http://yama-ben.cocolog-nifty.com/ooinikataru/2005/11/post_0e8f.htmlエントリーも既に3回を数え、コメント欄でのやり取りも活発である。 【盗作】=【悪いこと…

『誰のための綾織』(飛鳥部勝則)盗用により絶版・回収

http://www.asahi.com/national/update/1108/TKY200511080178.html既報のとおり、読者からの指摘を受けた出版社が、上記のような措置をとったという。 たまさか『誰のための綾織』『鏡陥穽』と手にとっており、内容もさることながら氏の独壇場である【絵画】…

立ち読み@図書館

逗子市図書館がリニューアルしたのはよいけれど、週末となると利用者が多数押し寄せ、新刊書は端から借り出されるわ、館内の椅子はすべて埋まるわで、あまりゆっくりとは過ごせないのでちょっと不便。その分、蔵書予算を増やしてください長島市長。■『文学界…

賞雑感

【芥川賞】 『土の中の子供』? 『煙か土か食い物』と『暗闇の中で子供』をあわせたみたいなタイトルじゃないか。まだ芥川賞は舞城王太郎の呪いに取り付かれてるのか。中村文則は是非授賞式で「こんにちは、舞城王太郎です」とやってもらいたい。嫌味で。あ…

『綺譚集』津原泰水(集英社)

綺譚集作者: 津原泰水出版社/メーカー: 集英社発売日: 2004/08/05メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 12回この商品を含むブログ (49件) を見るときに画面の描写が物語を語るその目的から逸脱して、描写そのものがあらぬ方向へ観客を誘って行く類いの映画が…

「春期限定いちごタルト事件」米澤穂信(創元推理文庫)

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)作者: 米澤穂信出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2004/12/18メディア: 文庫購入: 13人 クリック: 216回この商品を含むブログ (642件) を見る 諦念と儀礼的無関心を自分の中で育んで、そしていつか掴むんだ、あの…

最近女性作家雑感

年初から『文藝』や『新潮』といった文芸誌を手にしていて、女性作家が目立つなあと感じる。はなはだ雑な言い方であるが、その内容がほぼ『独身乃至は満たされない既婚女性の繊細な内面を繊細に』描いたものであるのは、それが文芸誌というものだと捉えるの…

今年の3冊

『さよなら妖精』(米澤穂信)東京創元社 ISBN:4488017037 『ロンリー・ハーツ・キラー』(星野智幸)中央公論社 ISBN:4120034860 『パイの物語』(ヤン・マーテル)竹書房 ISBN:4812415330えいや、っと決めてみる。■『さよなら妖精』 『萌え』ということば…

サイト運営者が選ぶ今年の3冊(小説限定)

光栄にもid:seijotcpさんにお呼ばれいたしました。 (id間違えました。訂正しまっす) http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20041219怠惰な私に宿題はとてもとてもありがたいです。 がんばりまっす、少々お時間ください。

『さよなら妖精』(米澤穂信)ISBN:4488017037

『このミステリーがすごい!2005年版』同率20位にランクイン!おめでとう! 出てすぐに読んだ後、感想がまとめられずずっと引っかかっていた苦い一作。 このまま誰の口にも話題が昇らず消えていくには惜しい一冊だったので、このランクインは嬉しい。なんかこ…

ファウストVol.4

クリスマス仕様の表紙。合宿参加作家新作満載。 浦賀和宏の参加が嬉しい。唯一読んだ『浦賀和宏殺人事件』ISBN:4061822470、投げやりで冗談ミステリと思わせておいて(作品内作品が『YMOミステリ』!)実は超本格という離れ業でした。

『浦賀和宏殺人事件』(浦賀和宏)ISBN:4061822470

■女児誘拐のソファに「YMO」文字…販売ルートを捜査 よおし、わかった! 犯人は浦賀和宏だ!

杉浦康平

六本木に用事があったので、営業再開された青山ブックセンターに行ったら、杉浦康平フェアをやっていた。奥の壁イッパイに曼荼羅模様(笑)。そういえばABCの書架って、この装丁の本が並んでたんだよな。再開にふさわしいイベントだと思った。■青山ブックセ…

『総特集 西尾維新』(ユリイカ9月臨時増刊号)

昨年の11月に行われたという、西尾維新・東浩紀の対談が収録されていて、その中で東浩紀に 『アメリカ的なものの侵入が「ポスト・ムラカミの日本文学」を作り上げたという』独特の文学史観に基づき、『「新本格魔法少女りすか」を読んだとしたら、まず確実…

河出奇想コレクション3題

■『ふたりジャネット』(テリー・ビッスン)ISBN:430962183X熊たちが火を使うことを覚えた。そんなニュースが流れるなか、母親の介護に病院に向う車中から、ハイウェイ沿いの暗闇の中に、たいまつの炎を目にする。あれが熊の焚いた火に違いない・・・そんな…

キマイラの新しい城(殊能将之)ISBN:4061823914

テレビ好きの殊能先生に対する賛辞として、「2時間ドラマのように面白い」と書き記してみる。 実際は、「こんなに面白い2時間ドラマがあればいいのに」であり、同時にこれは、「面白い2時間ドラマにうってつけの原作」たりうるなと思う。【向いていること…

『新本格魔法少女りすか』西尾維新(講談社ノベルス)ISBN:4061823817

小説の一人称にうっかり感情移入をするような読み方をすると、痛いめにあうのが西尾維新でそれがまた西尾維新の楽しみ方でもあるんだけど、今回もちょうど半分くらいに出てくるあのダーツの矢があたかも喉に刺さった小骨のように読み手に違和感を与えながら…

月刊『コンビニ』

今、本屋に行ったら、月刊『コンビニ』つうのがあったですよ。読め、とばかりに平台に。したら■即効売上げ対策 夏こそ「声かけ!」 ・なぜ、今、「声かけ」なのか? ・声かけ名人に聞く ・声かけ成功事例 ■店長が読む 明るい「売場人間学」斜め読みですが、…

『針』(浅暮三文 早川SF SERIES J-COLLECTION ISBN:4152085428)

ある男が原因不明の皮膚感覚の亢進に見舞われていた。手が触れる道具、肌に当たる風、すべてのものがこれまでにない感覚を伝えてくる。 触覚により、モノのデザインに秘められた【モノの意図】と交信する前半は興味深いが、次第にそれが 輪ゴムは動物的に彼…