マヨネーズ臭の女

新幹線に乗っていた。通路側の座席に座っていたのだが、脇を一人の女が通り過ぎたあとに、マヨネーズの臭いが漂った。
その女はトイレにでも立ったのだろう、帰りに再び脇を通り過ぎたときに、またマヨネーズ臭を残していった。

その時から、日に数度、街ですれ違う女の中にマヨネーズ臭がするのがいることが気になり始めた。

鼻を突く酸味臭の中に、微かな蛋白質の腐敗臭と、汗や体臭とはハッキリと識別できる、人工的な食品添加物の安っぽい臭いが渾然一体となった独特な臭気。

なぜ彼女たちは、このような臭いを纏っているのだろうか?私なりにその原因を考えてみると

■仮説1.マヨネーズの大量摂取

現代日本人の味覚破壊を象徴するマヨネーズであるが、これを何にでもかけて食べるOLを想像する。彼女らは朝食時に白飯にパンに素麺にマヨネーズをかけたものを掻っ込んで出社する。昼にはマヨネーズで炒めた特製チャーハン弁当で小遣いを浮かし、夕食は友人と居酒屋でマヨネーズたっぷりのサラダやカルパッチョでヘルシーに済ませた分、小腹が空くので夜食にコンビニで買ったカップ麺にマヨネーズを入れて食べる。http://www.zdnet.co.jp/broadband/0305/26/lp06.html
こうして日夜マヨネーズを摂取しつづけた彼女の胃腸の内壁にはマヨネーズが層をなして付着し、襞の隅々までマヨネーズを詰まらせた肝臓腎臓でろ過された血液中にはマヨネーズの成分が溶け出して、新陳代謝と発汗が活発になるこの季節には、そのマヨネーズの臭いが体臭と共に発生するのである。

■仮説2.マヨネーズの衣服への付着

現代日本人の食の乱れは、何も過度な偏食と味覚異常に限られたことだけではない。家庭の食卓のいわゆる孤食化により、箸の上げ下げ、茶碗の上げ下ろしといった食の作法が若年層に受け継がれていない悲劇が、彼女たちの食卓での悲惨な状況を生み出している。つまりまともに箸も持てない彼女たちは、ポロポロポロポロこぼすのだ、食べ物を。こうして衣服に付着したマヨネーズは、幾度洗濯してもその度新たにマヨネーズの染みをつけられ、やがては決して消えない臭いとして残ってしまったのだった。

さてこれらの仮説には決定的なあやまりがあって、それはならばなぜ男からはマヨネーズの臭いがしないのかということで、私がこれまで臭いを感じたのがすべて女であるという事実にそぐわない。

そこで更なる仮説を立てると

■仮説3.マヨネーズ臭のコスメの存在

女性特有の臭いということならば、やはり化粧品を疑わないわけにはいかない。美麗な芳香を漂わす化粧品とは言えども、例えばパーマ液や除光液のような(それ自体は化粧品ではないが)女性の美しさを支える化学薬品の中には、とんでもない臭いを放つものがあるに相違なく、それでこそ美しさにリアリティもあろうというもの。

と、今思い出したのだが、どこかで「生卵で洗髪する美容法」というのを聞いたことがあった気がする。ならば

■仮説4.マヨネーズによる洗髪

という可能性もあるのではと思い立ち、早速検索してみたらあった。

マヨネーズで髪をサラサラ&ストレートにする裏ワザhttp://bbs.kireicafe.com/styling/board/index.php?qid=653

まず、シャンプーであらい、そのあと、リンスをすごくたっぷりつけます!そして、クシでわけめをつけて、それで、10分まちます!そのあと、マヨネーズ(五体不満足にでてたウラ技)をリンスのようにつけて、スーパー袋で、おおいます! (目&口&鼻のところをくりぬく!)
それで、10分たつとすごくサラサラ&ストレートになります!ダニはけっこーもったよー!

しかも投稿によると、この方法は乙武広匡の『五体不満足』ISBN4-06-209154-2が出典というではないか。

なるほど、乙武くんの言うことなら間違いなさそうだ!!!

というわけで、街中でマヨネーズ臭が漂ったら、

『ああ、今、乙武ファンの女とすれ違ったのだなあ』

と感慨にふけってください、これを読んだ人は。